東京高等裁判所 平成4年(ネ)3799号 判決
二 右認定事実によれば、前件訴訟の反訴は被控訴人と控訴人との昭和五五年一二月三日における債務確認及び金員支払の約定に基づく支払請求であるのに対し、本件訴訟は控訴人が健一に対して昭和五二年一月二六日から同年四月一八日までの間七回にわたって貸し付けた五四五〇万円について被控訴人が昭和五二年二月二七日ころ及び昭和五六年一月一二日までになした連帯保証を理由とする請求であるから、前件反訴と本件訴訟とは訴訟物が同一であるということはできない。
三 しかし、前件反訴も本件訴訟も控訴人の健一に対する昭和五二年一月二六日から同年四月一八日までの間の七回にわたる合計五四五〇万円の貸付金債権の存在を基礎とし、その返済について被控訴人が支払責任を生ずる法律行為をしたか否かを争点とするもので、前件訴訟の反訴では支払契約をしたと主張し、本件訴訟では二度にわたる連帯保証契約をしたと主張するものであって、右債権の回収をめぐって控訴人と被控訴人との間に生じた同一の事実関係を法律上別個の権利として構成し主張するにすぎないものである。しかも、本件訴訟における被控訴人の連帯保証の事実は比較的単純な社会的事実を基礎とする主張であり、これを前訴において主張することに特段の支障があったとは到底考えられないものである。以上の点に照らすと、本件訴訟は前件訴訟と実質的に争点を同じくし、前件訴訟の蒸し返しに当たるものであり、被控訴人を応訴によって不当に困惑させるものであるから、本件訴訟は訴訟手続における信義則に照らして許されないものと解するのが相当である。
(川上 谷澤 今泉)